本日は、今話題の映画「ダ・ビンチ・コード」とUMLの関係(?)についてお話しましょう。
「ダ・ビンチ・コード」の小説の重要なモチーフの1つに、西洋文明の根底に流れるシンボリズム、紋章学の伝統があります。
このシンボリズムの起源は、キリスト教誕生のはるか以前、古代エジプト文明、メソポタミア文明にまで遡ります。
小説中、教会の構造が黄金分割で構成されている云々、の話が出てきますが、この黄金分割や五芒星の問題は、紀元前500年ごろのギリシャの数学者ピタゴラスにより既に知られていました。
また、現在、十字クロスは、キリスト教の専売特許の様な状態になっていますが、キリスト教誕生以前の紀元前5000年ごろのエジプトにおいて、既に、(キリスト教の十字架とは全く異なる意味で)、神聖なシンボルとして使用されていました。
ちなみに、クロスは、ヨーロッパ人にとっては、かなりメッセージ性の強い図形であるようです。
先日、二人のフランス人が日本を訪れた折、筆者は彼らを湯河原にある古風な温泉旅館に連れて行きました。
時代劇に出てきそうな佇まいの旅館に彼らは大喜びで、翌日は京都に行くべく、車で熱海に向かっておりました。
ところが、街角の交差点を曲がったあたりで、彼らは突然無言となり、車内に異様な緊張感が走りました。まるで、空気が凍ってしまった様です。
私は、驚いて、どうしたんだと聞くと、一人が前方を指さして、あれはなんだと訪ねました。見ると、そこにはお寺の所在を示す「卍(まんじ)」のマークがありました。
彼らにとっては、この鉤十字の記号は極めて不気味なシンボルだった様です。二人とも戦後生まれで、直接ナチスドイツを見聞きしたことはないのですが、私は、彼らの反応に驚きました。
ヨーロッパでは、法律や社会的コンセンサスにより、鉤十字の使用が禁止されている国が多いそうです。
キリスト教以外の分野でも、シンボリズムは大きな影響を与えています。
有名な秘密結社フリーメーソンは、元々は石工の同業者組合を意味し、職業柄、幾何学の造詣が深く、あちこちに謎めいた記号を残しています。
一ドル紙幣に描かれるピラミッドと目の記号は、フリーメーソンのシンボルだと言われています。
さて、UMLの話題に戻りましょう。UMLは、ご存知の通り、図形をシンボルとして使用する言語です。そして、シンボリズムの影響は、陰に日なたに表れています。版を重ねる度に、むしろ、その影響は洗練された形で強まっているように思えます。
一例を挙げてみましょう。下の図は、シーケンス図の例です。この図の左上隅の表題部分は、五角形が描かれ、その中にインタラクション名(UserAccepted)が記されています。
五角形は、元来、生命体などの生き生きとした動きを象徴する図形として知られ、UMLで用いられる五角形は対象の振舞いを表象していると言われています。