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2006年4月6日木曜日

UML中級講座 第4回 OCUPインタミディエート試験

本日は、2003年より始まりましたOCUPインタミディエート試験について、その試験の特質を解説したいとおもいます。

1.4 OCUPインターミディエート試験

2003年秋に始まったOCUP( OMG-Certified UML Professional)資格試験ですが、現在の時点で、合格基準点は次の様になっています。

ファンダメンタル資格試験 46問以上正解(80問): 正答率 57.5% 以上

インターミディエート資格試験 31問以上正解(70問): 正答率 44.3% 以上

アドバンスト資格試験 29問以上正解 (58問): 正答率 50% 以上

この表に示されているように、インターミディエート資格試験が、最も合格基準が低く、最低合格ラインが50%を下回っており、非常に低い状態にあります。(念のために申しますと、採点は減点法ではなく、不正解の選択肢を選択しても減点はされません。)数ある資格試験のうち、合格水準が50%以下にあるというのは、極めて特殊な状態とも言えます。

高得点が難しい理由

これにはいくつかの要因が考えられますが、次に主なものをあげてみます。

1. UMLをモデル言語としてではなく、JAVAやC++等のプログラム実装言語と見なす、あるいはそのレベルの知識で受験する。

2. UML1.Xの範囲内の知識で受験する。

3. 市場に、受験のための教材があまり出回っていなかった。

4. OCUPの問題作成時期が、UML2.0の最終仕様確定以前に行われたために(最終仕様は上部構造(Superstructure)に関しては、2005年夏に確定)、試験範囲の逸脱や古いモデル図に基づくものなどが散見される。

試験対策について

まず、1についてですが、これはインターミディエート資格試験だけではなく、ファンダメンタル資格試験でも言える傾向です。
UMLは、第一義的には、分析・設計のためのモデリング言語であり、実装モデルも当然扱いますが、主眼は概念モデルやビジネスモデルなどの抽象度の高い領域に置かれています。
従って、実装モデル以外は、他の実装言語のようにコンパイルして動作を確かめるというようなことが出来ません。また、無理に実装言語と関連付けを行なって理解しようとする人もいますが、概念モデル以上への適用が難しくなってきます。(概念操作を習得できず、プログラミング上の便法の域から脱するのが困難)
単なる文法上の規約の暗記にとどまることなく、概念的モデルの習得と心得て、UMLを学習することが合格の早道であり、かつ、将来的にも有用な知識となります。問題の傾向としても、単純な文法規約を問う出題は少なく、むしろ概念的な問題が多いのがOCUP資格試験の特徴です。

2の「UML1.Xの知識で受験する」は、3で指摘した教材の不足とも大きく絡んだ問題です。
端的に言って、UML1.Xのレベルの知識での合格はたとえ合格基準が45%であっても難しいと言わざるを得ません。UML2.0での変更部分は大きく、かつ本質的な部分が含まれています。
UML2.0の仕様書は、ページ数も多く(約700ページ弱)、順番が必ずしも通読に適した順番には並んでいません。そして、UMLのツール開発者以外は読んでも意味のない部分が混在しており、UMLを使用する立場の人間にとっては、教材としてはあまり適当でないと言わざるを得ません。本講座が、これからUMLを学習し、そして使用して行こうという方々に、お役立ていただけることを願っております。

4の問題は、特にインターミディエート資格試験では、大きな影響があります。OMGの出題範囲として指定されているメタモデル図が、最終版では無くなっていたり、問題作成時の暫定版のメタモデル図と変わってしまっているものが、いくつもあります。この講座では、適切と考えられる場合には、最終版だけではなく暫定版仕様書での定義や解釈にも振れました。

しかしながら、実際問題として、過去の暫定版仕様書を深く勉強する意味はあまりありません。受験と言う目的のためであれば、100点を取ろうとすることは無駄な努力とも言えます。あくまでも、基本を確実に押さえれば、たとえトリッキーな問題や、奇問・難問に答えられなくとも十分合格できる試験だと言うことを肝に銘じ、本質的な部分、概念操作や体系の理解を心がけてください。
実際の試験では当面の正答率60%ぐらいに目標と定め(もちろん45%以上あれば合格できますが、確実度を上げるため)、それ以上の得点を稼ぐくらいであれば、アドバンスト資格試験などの、より上位の学習に力を注ぐ方が望ましいと思います。
なおこの問題は、バージョンアップや標準の改正の時期にみられる過渡的なものであり、今後の試験問題の改訂のタイミングで解消されるものです。