夏目漱石の「吾輩は猫である」で美学者迷亭が、昔二週間ほど逗留したと語る姥子温泉です。
残念ながら漱石自身が姥子温泉に来たと言う確実な証拠は残っていません。
従って文学者の書く年表には、漱石の姥子行きの事蹟は記入されてないものが多いようですが、しかしながら、
- 子規に宛てた手紙に、大学入学前後に箱根に旅行に行くと語っている事
- 「吾輩は猫である」中で、迷亭の湯治の場として登場。文中ではその様子を登山と表現しており、ある程度高所にある温泉場を想像させるが、姥子温泉は標高850メートルあり、当時の箱根では最も高所にある温泉場だった
- 漱石は若い頃トラホームを患い、長い間目医者通いをしており、姥子は全国でもめずらしく眼病に良く効く温泉場であった
等の事から、姥子温泉に逗留した事は、温泉ファンの間では確実視されているようです。
ここは、箱根で唯一と言っていいほど、最後まで湯治場の雰囲気を残している宿です。
あいにくの雨でしたが、それが反って、湯治場らしい雰囲気を醸し出してくれます。
漱石が姥子に来たのは100年以上前の事ですが、昨日まで湯治に来ていたと言われても、違和感が無いほど、落ち着いた感じの建物です。
裏庭には、鎌倉時代の石仏も並んでいて、百年前ぐらいだと、ついこの間と言う気分にさせられます。
極めて透明感のあるお湯で、右の写真の注連縄の張ってある奥の湯船で、顔をつけ目をぱちくりさせれば目に良いらしいので、筆者もやってみました。
気のせいか、このブログを書いている今でも、目が良くなったような気がします。