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2010年10月26日火曜日

神田山の謎

筆者は時折用事があって、神田の街を歩き回ります。
 聞くところによると、昔このあたりには神田山という山があったそうですが、江戸時代の初め頃、江戸城の前の入り江を埋め立てるために切り崩してしまったそうです。
ビルだらけの町並みを眺めているだけでは神田山がどのあたりにあったのか中々見当がつかなかったのですが、前回取りあげた地形ソフトで見ると山の痕跡は確かに残っています。
神田山 跡
 上の図の北から中央付近にかけて半島状に伸びて来ているのが本郷台と呼ばれる武蔵野台地の一部ですが、その南端部分の等高線に削り取られた痕跡があります。
面白い事に、東西に直線的に走る靖国通りもこの部分だけは、南側に山裾を縫うように迂回しています。
現地に立って見ると分かりますが、この部分はわざわざ迂回が必要なほどの傾斜地では無いのですが、恐らく道筋が神田山がまだあった時代の名残のままなんでしょう。

神田の町は今でも老舗が残っており、筆者もここで和菓子屋に入ったりしています。

神田山の麓にある「ささま」で買い求めた秋の和菓子とラジオ

2010年10月19日火曜日

地形ソフト

最近本屋に行くと地形に関する本が良く並んでいます。
筆者も、マニアと言うほどではありませんが地図、特に地形図を見るのが好きでよく見ます。(時間があれば、一日中見ていたいのですが、なかなか、そうはいきません。)
また最近は、オンライン上でも地形図が手に入り易くなりたいへん重宝しています。
特に気に入っているのがGoogle Earth のアドインで、東京の武蔵野台地の構造が色つきで一目で分かるようになっているものです。
都内に住んでいると、大小のビルが建て込んでいて元の地形が非常に分かりづらくなって来ているのですが、このソフトだと一目瞭然です。

一例を挙げてみましょう。
筆者の自宅のそばに四谷という街があります。
四谷と言う地名は家康入国以前からある事が知られていますが、語源ははっきりしません。
江戸時代に書かれた書物「御府内備考」には、『甲州街道筋に4軒の旧家、梅屋、木屋、茶屋、布屋があって「四家」と呼ばれていたが、いつの頃からか「四谷」と書くようになった』とありますが、これは明らかにおかしく、これらの4軒の家は、家康入府以後、江戸時代になって移住してきたものであり、時代が合いません。

恐らく、四谷も他の千駄ヶ谷や市ヶ谷などの「○○谷」地名と同じく、谷地形から取られたものでしょう。
地形図でそれを確認してみましょう。
下の図は、四谷を中心とした地形図で、中央の窪んだ谷地形が四谷の地名の発祥地域です。


この図から、四谷も他の東京の古い町筋と同様、谷地(やち)に発達した集落であった事が分かります。
また、一説には、四谷は4つの谷と言う意味だと言われていますが、谷の形状を見ると、その説もなかなか説得力があります。(北から南に走る谷に、西から3本の谷が入っていて、合計4つの谷から出来ているように見えます。)
図中の414号線を示す六角形の記号の右手(東側)の三角形の地所は迎賓館です。
この地図上は、現在は、赤坂御所(赤坂御苑)以外の部分はすべて大小のビルで覆われていますので、元の地形は想像する事が非常に難しくなってきています。

こういった場所を散策するには、このソフトは手放せません。

2010年10月10日日曜日

漱石と姥子温泉

忙中閑ありで、午後暇が出来たので箱根にぶらりとやって来ました。

夏目漱石の「吾輩は猫である」で美学者迷亭が、昔二週間ほど逗留したと語る姥子温泉です。

残念ながら漱石自身が姥子温泉に来たと言う確実な証拠は残っていません。
従って文学者の書く年表には、漱石の姥子行きの事蹟は記入されてないものが多いようですが、しかしながら、

  • 子規に宛てた手紙に、大学入学前後に箱根に旅行に行くと語っている事
  • 「吾輩は猫である」中で、迷亭の湯治の場として登場。文中ではその様子を登山と表現しており、ある程度高所にある温泉場を想像させるが、姥子温泉は標高850メートルあり、当時の箱根では最も高所にある温泉場だった
  • 漱石は若い頃トラホームを患い、長い間目医者通いをしており、姥子は全国でもめずらしく眼病に良く効く温泉場であった
等の事から、姥子温泉に逗留した事は、温泉ファンの間では確実視されているようです。


ここは、箱根で唯一と言っていいほど、最後まで湯治場の雰囲気を残している宿です。
あいにくの雨でしたが、それが反って、湯治場らしい雰囲気を醸し出してくれます。
漱石が姥子に来たのは100年以上前の事ですが、昨日まで湯治に来ていたと言われても、違和感が無いほど、落ち着いた感じの建物です。
裏庭には、鎌倉時代の石仏も並んでいて、百年前ぐらいだと、ついこの間と言う気分にさせられます。

極めて透明感のあるお湯で、右の写真の注連縄の張ってある奥の湯船で、顔をつけ目をぱちくりさせれば目に良いらしいので、筆者もやってみました。
気のせいか、このブログを書いている今でも、目が良くなったような気がします。